東京大学制作展2021 “キョリブレーション” ライブイベント「東京大学制作展 the Live」

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2021年11月19日~2021年11月23日の5日間に渡って開催された東京大学制作展。その一環として、「東京大学制作展 the Live」と銘打ったオンラインイベントの配信が、2021年11月20日に中山未来スタジオにて行われました。

東京大学制作展とは、東京大学大学院学際情報学府の学生が中心となって行うメディアアートの展覧会です。2004年に始まった同展覧会は毎年行われており、近年は7月(Extra)と11月(本展示)の2回開催されています。今年の11月の展覧会は24回目にあたります。
今回の制作展のコンセプトは「キョリブレーション」。「距離」と「キャリブレーション(較正)」を合わせた造語で、コロナ禍によって人・モノとの距離が曖昧になった今、作品を通して己と外部との物理的・心理的な距離の感覚を改めて問い直そう、という意味が込められています。

今年の7月に行われた制作展Extraでも、イベントとして高校生に向けたZoomウェビナーを実施しましたが、今回のイベント「東京大学制作展 the Live」は更にパワーアップした内容になりました。イベントは2部構成となっており、第1部(16:00~18:30)は「私が作りました。〜制作展メンバー座談会〜」と題し、2時間半(3セッション)に渡って、展覧会に出品された全14作品の作品リーダーが、自身のバックグラウンドや作品の意図についてモデレーターと語る様子を、zoomウェビナーを用いて配信しました。第2部(19:00~20:30)は「東大が目指すメディアアートの現在地」と題し、外部からゲスト講師としてキュレーターの山峰潤也氏を招き、本制作展の講師を務める筧康明先生と共に、出品されているいくつかの作品の講評をして頂くと同時に、今後の制作展のあり方について意見をお聞きしました。第2部はYoutube Liveを通じて生中継され、アーカイブとして録画がYoutubeにアップロードされました((ページ下のURLから視聴することができます)。
ゲストの山峰潤也氏は写真美術館、金沢21世紀、水戸芸術館のキュレーターを歴任され、現在はANB Tokyoのディレクターをされています。今年話題を読んだKAWSの展覧会のキュレーターもされていました。

第1部は各出演者が各々のデバイスから参加する形であったため、オープンスタジオには一部の出演者が集まるだけでしたが、第2部は講評者である山峰潤也氏と筧康明先生、モデレーターの佐倉玲さんの3名に加え、プロデューサーの藤波徹柊さん、作品リーダーの中川陽介さん、小山このかさん、望月花妃さん、久保田愛海さん(出演順)もオープンスタジオに集結し、収録を行いました。ソーシャルディスタンスを保つシールドの設置や録音・撮影機材の用意など、プロデューサーの楊欽さんを中心に学生たちで準備を万全に整え、配信に臨みました。

ゲストの山峰氏の自己紹介と、筧先生による東京大学制作展の紹介から、トークイベントは始まりました。その後プロデューサーの藤波さんによる本展覧会のコンセプト「キョリブレーション」の説明があり、そこから各4作品の講評へと移りました。プロのキュレーターの方から直接講評を受けるということで、各作品リーダーからは緊張も伝わってきましたが、作品を今後どう発展させていけば良いかについて、有効なアドバイスを山峰氏から受け、充実した表情を見せていました。最後にプロデューサーの2人から山峰氏に質問が投げかけられました。楊さんの「山峰氏が東大でメディアアートを教えるなら、どのような内容を教えたいか」という質問に対しては、「美しさが権威性を持っている今の美術・社会のヒエラルキーに向き合いつつも、それをずらし、社会にどのようなアクションを行うことを美しいと感じるか、考える」、藤波さんの「オンライン展示をどういった形にしていけば良いか」という質問に対しては、近年のネットの、人気の理由がはっきりしないのに拡散が起こる現象に触れた上で、「コンテンツを放った上で、放ったコンテンツがどこから来たのか逆算していった時に人々から発見されるような展覧会も、リアル展示のように金銭面で会期が決まっているわけではないオンライン展示では可能」とそれぞれ山峰氏は回答されました。

山峰氏はイベントを振り返り、「文系・理系に関わらず様々な分野の人が集まって表現を考えるということに可能性を感じた」と総括され、筧先生からは「これからもこうして山峰さんに講評を頂く機会を作っていきたい」という言葉がありました。

日時

2021年11月20日(土)16:00 – 20:30

主催者

東京大学大学院 情報学環・学際情報学府

参加者

イベントの視聴者 約50名(オンライン)

関連URL

https://www.iiiexhibition.com (制作展URL)

執筆者

佐々木竜太郎(学際情報学府 植田研究室 修士1年/東京大学制作展 記録班)



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