豊島岡女子学園&稲葉・岡田研究室ワークショップ「ロボットをデザインして動かそう!」

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2023年12月26日(火)から29日(金)の4日間にわたり、東京大学大学院情報理工学系研究科の稲葉雅幸・岡田慧研究室は、日本ロボット学会の依頼のもと、中高生が自ら「ロボットをデザインし、ロボットとの夢を実現すること」をテーマとしたワークショップを開催しました。豊島岡女学園中学校高等学校の先生と生徒8名(中三生5名、高一生3名)が参加しました。今回のワークショップでは、研究室所属博士後期課程(市倉愛子)と学士課程(澤田智佳)の女子学生2名を中心に、大学院生や教授によるレクチャーとワークショップを行いました。

以下、当日の様子を報告します。

 今回のプロジェクトでは、執筆者(市倉)の研究テーマである「人とロボットの調和的関係の構築」に基づいた「友達ロボット」制作班と、澤田の研究テーマである「ロボットによる居場所創出」に基づいた「居場所ロボット」制作班に分かれ、オリジナルロボットのデザイン、ロボットシステムの学習、オリジナルロボットのコンセプトムービー撮影を中高生主導で実施しました。
 生徒たちは既に、11月12日と19日に、オリジナルロボットのデザイン、ロボットシステムの学習を終えており、中山未来では、友達ロボットの「くろみつ」と居場所ロボットの「柏木さん」のコンセプトムービーの撮影を行いました。

「友達ロボット」のくろみつ(左:生徒が話し合いによって描いたストーリーボード, 右:実機)

「居場所ロボット」の柏木さん(左:生徒が話し合いによって描いたストーリーボード, 右:実機)

オリジナルロボットお披露目の様子

 コンセプトムービー撮影では、まず、市倉と澤田からロボットのオリジナルロボットの作り方についてのレクチャーを行ったのち、事前の活動中のグループでの話し合いで描いた絵コンテにしたがって場面ごとのロボットの表情、声、動作を決定し、演技の稽古を行うようにロボットの動きを作り込みました。ロボットの制御にはPythonを利用し、生徒がこれまでに学習してきたロボットプログラミングの知識を実践する場となりました。さらに、ムービー撮影の際のカメラマンや音響効果も生徒が担当し、ロボットを動かしたり音声を出したりするタイミングや撮影場所、画角にもこだわり、より効果的なコンセプトの伝え方を考えていきました。

ムービー撮影の様子 生徒たちは自分たちが考えたシナリオに合う動きや表情を考えた後、振り付けを行うようにプログラミングを繰り返す。思ったような動きにならない場合はタイミングや動作速度を調整した。

 撮影期間中、ロボットの関節が外れてしまう、ロボットを思うように操作できない、といったトラブルにも見舞われましたが、研究室メンバーの協力のもと修理と試行錯誤を繰り返し、ムービー撮影を3日目までに終えることができました。生徒は、多くの研究室メンバーが修理をしている様子を目の当たりにし、 よりリアルなロボット研究の現場を体験することができました。

生徒自らが考え、ロボットの制御やムービーの撮影を行っている様子 持参した小道具やスタジオ内外を広く利用してよりリアルな撮影を行っていく。撮影途中にはロボットや人の動き、カメラのアングルなどを積極的に話し合う生徒の姿が見られた。

 撮影日数を重ねるにつれ、生徒はロボットシステムへの理解を深め、最終的には、研究室メンバーの援助がなくとも生徒だけでロボットの制御から撮影までこなすことができるようになりました。また、生徒自らがロボットの制御を行ったことで、ロボットシステムの限界や可能性を両面から学び、ロボットに対するイメージの変化が見られました。

「友達ロボット」や「居場所ロボット」の要素分析シート及び絵コンテボード これまでに行ってきた活動内で分析した内容を大きな紙に書き出し、随時参照できるようにスタジオ中央のホワイトボードに掲出した。生徒によるロボットの絵も見られ、ロボットへの愛着が伺える。

 撮影は順調に進み、最終日には、より自由度の高いロボットの組み立て体験及びくろみつと柏木さんのコラボ動画の撮影まで行うことができました。そして最後に、オリジナルロボットの誕生を祝うと共に、これまで撮影してきたコンセプトムービーを参加者全員で鑑賞しながらワークショップ全体の振り返りを行いました。

ムービー鑑賞会の様子 講座の最後には撮影してきたコンセプトムービーの鑑賞会を行った。互いの班のムービーはこの時に初めて鑑賞したので、時折笑いも起こりつつみんな真剣に見入るように鑑賞していた。
生徒が撮影したくろみつと柏木さんのコラボムービーの一場面 コンセプトムービーの他に撮影したコラボムービーでは、柏木さんとくろみつが初めて出会い仲良くなる様子が微笑ましく描かれている。

 参加した生徒たちは、積極的にワークショップに参加し、より良いムービーを撮影しようとするだけでなく、空き時間にもロボットの外装の補強やロボットが身につける小物の制作を行い、オリジナルロボットへの愛着を深めていきました。
 ワークショップに参加した生徒は、「ロボットは何でも出来るイメージがあったが、人がやってあげることが多く、思ったより対等であるように感じた」「ロボットがより身近にかわいらしいものとして感じられるようになった」というように、ワークショップを通したロボットに対するイメージの変化を感じていました。また、ロボットと友達になることやロボットが居場所になることについては、「自分が動かすだけだと友達というより子供」「居場所を作るのは双方での支え合いが大切」という意見も得られ、研究室メンバーと参加者が、将来の人とロボットの関わりに対する考えを互いに深めることができました。
 イベント終了後のアンケートからは、生徒自らがロボットのデザインから制御までを体験したことで、ロボット分野への更なる興味やロボット(工学)関連職業への関心が高まっていることが報告され、STEAM 教育の一環としても意義のあるワークショップになったと期待しています。

結びに、このイベントにご協力いただいた全ての皆様に感謝致します。
ありがとうございました。

日時

2023年12月26日 – 29日 10:00 – 17:00

主催

東京大学大学院情報理工学系研究科 稲葉雅幸・岡田慧研究室
日本ロボット学会ダイバーシティ推進委員会

参加者

豊島岡女子学園中学校・高等学校 (生徒8名、引率教員1名)
東京大学 (学生6名、教員4名)
日本ロボット学会ダイバーシティ推進委員 1名

執筆者:市倉愛子(東京大学大学院学際情報学府博士後期過程1年, 稲葉・岡田研究室所属)



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