インクルVIハッカソン – 視覚障害のある方ともあそぶゲーム作り

アーカイブ

2024年9月28日(土)、9月29日(日)の2日間、「視覚障害のある人 ( 見えない/見えにくい人) ともに遊べるアナログ・デジタルゲームを作るハッカソン」を開催しました。

この企画は「視覚障害のためのプログラミング学習を考える研究会」が主催し、プログラミング環境等を構築することを目指していますが、まずはゲームやあそびについて考えつくることで、そのためのヒントを得ようという試みになります。

全盲の方2名を含む8名の参加者で2チームに分かれて、視覚障害のある人 ともに遊べるアナログ・デジタルゲームづくりに取り組みました。大学生から社会人まで様々な属性の方にご関心をお持ちいただき、非常に濃い時間となりました。

初日の前半は自己紹介や、主催者からの足場掛けとして、「見えないということ・見えない体験」を筑波技術大学の小林真先生から、「あそびについて・見えないを意識して遊んでみたこと」として東京大学の倉本大資特任研究員から、「真っ黒な画面のアプリづくり」をビジュアルプログラミング言語Viscuitの開発者原田康徳様から、参加者に様々な情報提供をしました。

小林先生の見えない体験の時間は、クリアファイルや黒画用紙といった身近な素材を利用して、見えにくさ、視界の制限などを多くの参加者が体験しました。全盲のお二人には小林先生からの提案で「黒画用紙を自由に使って“犬”を作ってください」と課題が出され、折り紙や切り絵といった方法で思い思いの犬を作成されました。

特任研究員の倉本からは、「あそび」に注目する理由や、西洋画から浮世絵までもを参照し、ホイジンガとカイヨワによる人間と遊びについて研究された文献から、遊びの類型について理解を深めました。また、この企画を準備するにあたり、体験した「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」でのエピソードや、スマートフォンで使えるアシスト機能を使ってみた経験を共有しました。

原田様からは、自身の開発したViscuitの紹介があり、それが視覚に依存していることなどを踏まえ、これから取り組みたいと考えているアプリケーションのプロトタイプの披露がありました。見えない/見えにくい人にこっちに来てもらうのではなく、見える人があちら側に行くような体験を作りたいとこれまでの方向とは異なる考え方を示していただきました。

チームは、これらの進行のなかで、関心やスキルによって参加者同士で組み、各チームに当事者がいるような組み合わせになりました。
初日はアイディアを出すために話し合いが中心となり、話し合うといっても既存のゲームを見える人見えない人が一緒になって遊んだり、見える人も目隠しして体験するなど、お互いの感覚を共有する様子が印象的でした。

また、主催者側から「議論のためにホワイトボードや付箋紙などもありますよ」と声がけをしたのですが、それぞれのチームから「でも(見えない方と一緒に)どうやって使ったら…」といった反応が返ってくる場面もありました。このことについて、普段から視覚障害者のクラスを大学で担当されている小林先生に伺うと、手ぶらで(付箋などを使わず)議論することが多いことや、Google Docsのような共同編集可能なドキュメントの登場が、そうした場面に非常に役に立っていることを教えていただきました。

2日合わせて約8時間の発想や作業の時間を経て各チームからいくつかのあそび、ゲームのプロトタイプが発表されました。

・困りごとを解決するアイテムをブロックで作るあそび
(今回はお題カードを利用して、)困り事の発生したシチュエーションが提示され、それを解決するであろうアイテムを10個のブロックのパーツを使って表現して、お互いに交換してシェアをする。どのアイテムが役立ちそうか評価する。

・ラジコンを操縦し音の出る的(まと)に向かってそれを倒すゲーム
micro:bit を使って作成したラジコンカーを音や(見えている)周りの人の助言によって操縦して的(まと)を倒せるか挑戦する。
倒してはいけない地形や味方といった障害物も配置して難易度を調整可能。

・盤の上でアヒルの向きを4つ揃えよう
アヒルの形をした駒を交互に置きあって、5x5マスの盤の上で4つ並べる(縦横斜めまたは田の字に固める)と勝ち。自分のターンでは90度ごとの4方向のどれかに向けて盤の上に駒を出すか、出ている駒を回転させるかが選べる。

このような多彩なゲームや遊びが出来上がりました。それぞれを参加者や主催者がお互いに遊び意見の交換も活発に起こるなど、大変盛り上がりつつお開きとなりました。

見える人、見えない人ともに充実した時間だったと感想もいただき、継続した活動として取り組んでいきたいと考えています。

<番外編>
全盲の方がお2人も参加されるとは想像もしていなかったため、会場となった情報学環オープンスタジオの担当者でもある倉本は、各チームが議論で盛り上がっている時間を利用して、会場の平面図を簡易的な触図として作成してみました。

お二人に試していただくと、「中央にある壁や柱は何なのか」と聞かれたり、
「入り口がここなら自分は今この辺りかな?」と非常に良く空間を把握されていることを教えていただくといったこともあり貴重な経験をしました。

日時

2024年9月28日(土)〜 29日(日)

主催

視覚障害のためのプログラミング学習を考える研究会

協力

情報学環オープンスタジオ|中山未来ファクトリー

参加者

大学生・社会人 8名

関連URL

https://inclvi-hackathon-0.peatix.com/

執筆者

倉本大資(東京大学 情報学環 特任研究員)



アーカイブ一覧へ