東京大学 本郷キャンパス 情報学環本館地下1階
東京大学情報学環 オープンスタジオ
テクノロジーで繋がる×広がる探究学習WS
アーカイブ 2024年10月18日(金)
2024年10月11日、大分県立佐伯鶴城高等学校の生徒16名が本郷キャンパスを訪れ、東京大学情報学環オープンスタジオ・中山未来ファクトリで探究活動を展開しました。
佐伯鶴城は九州でも有名な探究学習に力を入れている高校で、SSHにも指定され、文理融合的な学びを展開しています。今回の遠征では関東各地で最先端の研究現場をまわり、その集大成・ラストミッションとして本郷キャンパスに足を運んでくれました。当日はまず、佐伯鶴城高校のO Bである情報学環の渡邉英徳教授よりリキッドギャラクシーを用いた戦争アーカイブや震災アーカイブに関するレクチャーがあり、生徒たちは熱心に聞き入っていました。
次に小松研究員からVRやAIを活用したレクチャーがあり、実際にゴーグルを用いたVR体験をしてもらいました。VR自体が初めてだという生徒もおり、テクノロジーとその使い方について、新しい視座を自分ごととして体感・獲得してもらえたようでした。
最後のパートでは大井研究員によるファシリテートのもと、今回の研修旅行と東京大学訪問を総括的に振り返るとともに、感じたことや学んだことを自身の探究に紐づけてインストール&アウトプットする目的で以下のテーマでワークショップを行いました。
「学際情報学府での研究を想定した文理融合的な研究計画書を考えてみる」
ワークショップは2人1組のペア活動での議論・構想を経て全体での発表活動まで行いました。ワークショップでのミッション・ルールは次の図に示す通りで、緩やかな縛りを設けることで創発的かつスムーズな議論が生じていました。
非常に限られた時間でしたので、講師の中では大まかなテーマが浮かび上がればOKという想定でしたが、自分たちの関心に即した「問い」をもとに、多様で興味深い研究計画が立てられ、手法や意義に至るまでを論理的に分かりやすく堂々と、そして楽しそうに発表する姿に驚かされました。生徒たちのポテンシャルの高さと佐伯鶴城高校のカリキュラムや先生方の日々のご指導、そして東京大学情報学環オープンスタジオというトポスが織りなす化学反応により、素敵な探究が共創されたのではないかと感じています。
生徒たちによるWSで構想した研究計画のテーマと事後のリフレクション例は以下の通りです。
<生徒たちがWSで構想した研究計画のテーマ> ▷方言が失われないようにするためのAIコミュニケーション ▷AIによる交通量の把握と信号機の配置・待機時間の改変 ▷メジャーなお土産をAIで作ろう ▷生体間子宮移植後出産 ▷宇宙旅行を身近に ▷VRで生活する ▷自宅にいながら海外留学 ▷動物とコミュニケーション
<高校生たちからのリフレクション例>
VRで実際にはその場所にはいないけど自分がその場所に入り込んだような状況になる事が驚きました。体験させてもらったのは戦争の後の瓦礫がたくさんある場所でどこを見渡しても綺麗な場所はなくて自分は戦争を経験していないけど決して人が生きていけるような状況ではないなとVRで感じる事ができました。
現在行われているロシアとウクライナの戦争の戦火をVRを通して見ることで、より身近に悲惨な状況を感じることができ、世界中の人々がこの体験をすることで世界から争いが無くなるのではないかと思いました。
VRでは、実際に紛争の被害がそこにあるように見えて、これは現実で起こっているんだというイメージを持つことができました。
VRによるうつ病の治療も行なっていることはとても驚きました。AIの発展によって人が助けられていることは自分が思っているより多くあるんだと実感しました。
VR体験は自分が予想していたより色々な活用方法があり、安価で、実際に体験しにくいことも体験することができる、可能性が大きいものだということがわかりました。特に以前の自分の認識では、娯楽に使われているものだったため、うつ病治療にも使われていることが衝撃的でした。
デジタルデザインはすごく複雑で難しくて誰にでも取り扱えるものではなく特殊な機械を使わなくてはならないという印象があったが、私たちでもものによってはできるものがあることを知りました。
テクノロジーやAIが進んでいるからこその危険や気をつけなければならないこともたくさんあると知ることができました。
このような体験をすることで、人ごとだったことを自分のことのように感じられます。そのため支援活動やもしもの時に備える体験をすることができると思いました。
自分たちがやったことのないような探究だったので難しかったけど一個テーマを決めると解決方法の案も割と出てきて短時間だったけど有意義な時間だったなと思います。ただ、一個解決方法を見つけると一つの問題点も出てきてそれをクリアするためには別の解決方法が必要になってきたりして探求というのはかなり難しい物なんだなと実感しました。
着眼点がそれぞれ違くて、新しい視点を得ることができた。デジタルをどのように活かすのかが一番苦難した。条件がつくだけでこんなにもテーマが絞られて来るのかと驚いた。日頃の生活でどれだけの視点を増やせるかが今後の研究でも鍵になっていくのだなと思いました。
他の班と意見交流をする中で新しい考えや疑問に思う点などが生じて、探究活動の楽しさに気づくことができました。大井先生のサポートもあり、苦手な発表も普段より自信を持つことができました。今回のワークショップで、自分が興味を持ったことに対して、筋道を立てながら深く調べ、楽しさを味わうことの大切さを学びました。楽しく、有意義な時間を過ごすことができました。
ワークショップは少し不安でしたが、ここまでで学んだことに共通する「いかに身近に課題を見つけて科学とするか」ということに気をつけてテーマを決めることができました。決まったものだけでなく、他にもいくつか案が浮かんだのはこの研修を通しての成長だと思います。先行研究などは時間がなくて調べられませんでしたが、目的や技術の使い方をはっきり述べることができたので及第点だと思います。他のペアの発表もしっかりしていて、聞くのが楽しかったです。
考え抜くことは本当に大切な事だと気づくことが出来ました。今の時代調べようと思えば調べられる時代なので私自身も途中で考えることをやめてしまった時があったと思います。あることに対していつもより少しでも多く自分の頭で考えてみることで変わるものがあると思うのでこれから考えることを大切にしていきたいです。自分以外の人の着眼点は面白くて自分には浮かばないことだったので共有しあうこともこれからの探究活動に活かしていきたいなと思いました。ハンズオンワークショップ、発表会を通して多くの気づきがありました。
自分たちが今回の研修で学んだ内容を基に即興で探究計画を発表するという形式は、参加者の創造力や思考力を引き出す絶好の機会となりました。限られた時間の中での発表準備は、相方とのチームワークやコミュニケーション能力を鍛える良い経験になりました。自分たちの考えを喧嘩せずにまとめ、聞く方々に伝える力が試される中で、他の参加者の視点、考え方、アイデアにも触れることができ、非常に有意義な探究においての学びの場となりました。
自分自身はアドリブ力、発想力の未熟さを痛感した活動になりました。他の班の発表によって、具体的な改善点や新たな視点を得ることができました。このワークショップを通して、探究活動の楽しさと、その過程で得られる成長を実感しました。これから自分達も始まるであろう探究活動へと活用していきたいと思いました。
オープンスタジオでのワクワクする探究体験をトリガーとして、佐伯鶴城高校の皆さんの今後の学びがますます楽しい知の環をもたらすものになるよう、研究室一同祈念しております。
大井将生
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