あそびの未来ファクトリー2025

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2025年2月17日(月)から3月6日(木)にかけての18日間、第7回目となる「あそびの未来ファクトリー」を開催しました。
このイベントは学生向けのアイディアソンで参加者を広く募ることから多様な所属の参加者構成となりました。情報学環オープンスタジオを期間中貸切ってじっくり対面で実施しています。

参加者にはテーマとして、「”未来のあそび”をチームでつくりだす」ことが与えられ、「あそび」とはそもそもどういったものなのか歴史を辿り議論の土台を作り、各チームの関心に基づき様々な角度であそびについて考え、それを試作・実装し、それらで遊びながら磨き上げ、中間発表、最終審査とチーム対抗でアイディアを競うこととなります。

最終審査で提出するのは、その遊びの面白さを伝える動画となっており、遊びそのものの完成度はもちろん、作り出した遊びに対する理解や見せ方まで評価されるため各チーム真剣に遊びに取り組むことになります。

会期中のスケジュール
2月17日(月)|自己紹介・説明会・ブレインストーミング
2月18日(火)|技術サポートday
2月19日(水)|
2月20日(木)|技術サポートday
2月21日(金)|中間発表会
2月27日(木)|技術サポートday
2月28日(金)|
3月 3日(月)|技術サポートday
3月 4日(火)|
3月 5日(水)|技術サポートday
3月 6日(木)|最終審査会

初日は参加者、審査員、アドバイザー、スタッフなど全員が顔を合わせるキックオフとなります。関係者全員の自己紹介のあと、その場でチーム作りに取り組みました。遊びの要素も取り入れ、最初のペアは着席した椅子の裏のトランプの数字によってランダムに組み合わされたり、生成AIを使ったグルーピングも試すなど初対面同士の交流の足場掛けとしてアイスブレークにもなりました。最終的には参加者同士が関心事など話に花を咲かせ、自主的にチームが出来上がっていきました。

その後、本稿執筆者でもある倉本大資(東京大学大学院情報学環特任研究員)によるあそびの類型のレクチャーとあそびのつくり方に関するワークショップを実施しました。レクチャーではピーテル・ブリューゲルによる絵画「子供の遊戯」や浮世絵の「子供遊びづくし」を紹介し、様々なジャンルのあそびを見ながら世界でも日本でも数百年前にもかからず、今もさほど変わらない人間とあそびとの関係性について確認し、ワークショップでは、参加者がこれまで遊んできた「あそび」を出し合いながら、その遊びをロジェ・カイヨワによるあそびの類型を軸に「あそび」の分析を行ったり、要素の入れ替えや付け足しによるリミックスを体験しました。

2日目からの「技術サポートday」では、アドバイザーとして招かれたさまざまな分野のクリエイターより、チーム毎に助言を得たり、アイディアを深める機会となりました。また、思いついたことを、ちょっとした素材を用いてプロトタイプをしすぐに遊びながら考えるチームがいくつもありました。紙やペン、ゲーム用のチップやサイコロなどはそのまま遊べますし、ブラウザのみですぐに開発環境が開けるScratchやp5.jsなどのツールの活用も目立ちました。

中間発表ではスライドを用いたアイディアの発表をし、審査員やアドバイザーからフィードバックがありました。いくつかのチームでは試行錯誤途中のプロトタイプの披露もありました。そしてまた数日の技術サポートdayを挟み最終審査に向け各チーム制作を続けました。各チーム、かなり練られたプロトタイプを繰り返し遊びながら、最終成果物の「考えた”未来のあそび”の5分以内の動画」を作成していきました。動画の作成での編集・音楽・シナリオや撮影などチームメンバーで分業しながらグループワークで進める様子はチームによる違いも見えて興味深い観察ポイントでした。

最終審査会では、作成した動画を見せるのに加え各チームデモプレイをしたり、審査員に実際に遊んでもらうなど工夫したアピールがありました。チーム内でさんざん遊びつくしたものであっても、審査員や他チームから思いもよらない視点を得るなど、アイディアソン形式という場の効果がうまく出ていました。
あそびへの視点がチームごと様々で、特に「あそびの外にあそびを探しました」と発表したチームには多くの審査員が唸るなど、まだこの先に広がる可能性を感じました。

最終発表の後、審査員一同による厳正な審査を行いました。各チーム非常に堅実な取り組みの成果は見えましたが、本年は最優秀賞は該当無しとなりました。他チームと頭ひとつ抜けるような、作り上げていく中での跳躍を感じる作品がなかったという意見が多く出たためです。

優秀賞の「こえde検査」は、音程と音量によってリング状のオブジェクトを操作する新感覚音ゲーです。パソコンに繋げられたマイクにむかって色々な高さ、大きさの声を出しながら、画面の中を左右に流れるアイテムをリングに通過させながら遊ぶゲームとなりました。

メッセージ賞の「もじもじ」は、混雑するトイレに並ぶ行列でのもじもじとした動きによって音楽を生成し列に並ぶ人たちのグルーヴ感を生み出そうという試みで、いわゆる遊びから離れた視点が評価されました。

また、もうひとつメッセージ賞として「キミの絵、伝わる?」が選ばれ、うまくいかないことを楽しめる遊びとして、筆を持つだけの人、キャンバスを持つ人は生成AIに出されたお題の絵をキャンバスを動かしながら描くといった行為を周りの人は見てその歪な絵からお題を当てるという状況の面白さが評価されました。

「新しいものを作る」と言われるとどこから手をつけたらいいか迷ってしまいがちですが、各チームとも自分たちのあそびの原体験や、メンバー各自の関心を新たなあそびと体験へ発展させようという方法でアイディアを生み出すことができたと感じられました。
テーマは「あそび」で、期間中さまざまなあそびにも触れながら、参加者同士あそびながら多くのことを学ぶ機会となったようです。特に今回はチーム内だけではない参加者同士の交流が多く見られ、大きな括りで学習環境としてみた時に多様な考え経験を持つ方が集まったのがプラスに影響したと感じています。
あそびの未来ファクトリーでの活動をきっかけとして、今後も交流が続いたり、今回のアイディアを本格的に実装するなど、参加学生たちが今後も活躍していくことを期待します。

日時

2月17日(月)〜3月6日(木) 14:00-17:00

主催

東京大学情報学環中山未来ファクトリー

参加者

大学生・大学院生 18名

関連URL

https://sites.google.com/view/asobi-mirai/home

執筆者:倉本大資(東京大学大学院情報学環・特任研究員)



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