中高生が表現する『私と福島』展

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2025年3月11日から3月16日にかけ「中高生が表現する『私と福島』展」を開催しました。

「中高生が表現する『私と福島』展」は、東京大学大学院 情報学環 開沼博研究室が主催する研究体験プログラム「福島学カレッジ」表現コースの修了生10名によるグループ展です。

「福島学カレッジ」は2022年度、県内外の中高生を対象にスタートしたプログラム。東日本大震災と原子力災害をはじめ福島県をとりまく課題や現状について、参加者がともに学び、考え、議論し、独自の研究成果を出すことを目指します。

表現コースは「福島学カレッジ」の理念に基づき、2024年度に新設したコースです。
全3回の実践型プログラムと2回のグループ展を通じて、震災を経験した福島を自分自身の視点で捉え、自由な方法で表現する力を育成。ゲスト講師や伴走するディレクターとともに「福島」を通し「自分とは」という問いの核を探り、自己表現としてのアートを身につけます。

2024年度は県内外の中学生4名、高校生6名が参加者となり活動。 「私と福島」をテーマに各人が想いを言語化し、自由な表現方法で作品制作に臨みました。
今回は福島県双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館で2月に開催した修了展の巡回展として本郷キャンパスにて開催されました。

すべての作品は特設サイトからご覧になれます。
https://fukushimagaku-c-hyougen.org/

3月16日は、表現コースのゲスト講師を務めた DJみそしるとMCごはんさん(ミュージシャン)、木下龍也さん(歌人)を招いてのトークセッションが行われました。

修了生が現地やオンラインで参加し、「福島学カレッジ」統括プロデューサーの開沼博も登壇。

プログラムディレクターの菊地ゆきによる進行のもと、

DJみそしるとMCごはんさん
これまで福島を『遠い』と感じていて、現状を知らないでいたことへの後ろめたさもありました。今回のワークショップで復興へ向かう町に足を運んでみると、私たちと変わらない日常もそこにあることを実感しました。
表現とは、自分と向き合う行為です。自分を嫌いになったり、『自分って天才かも』と思えたり、でも次の瞬間に絶望したりと、そういう過程を経て表現が生まれます。
皆さんの作品を鑑賞して、自分のことを突き詰めて表現するという経験が、中高生の時期に価値観に大きな影響を与えると感じました。

木下龍也さん
震災の前も後も福島を訪れたことがなかったので、実際に自分の目で見る経験ができたのは良かったです。福島に対して自分はまだ向き合えていないと感じていましたが、「私と福島」展の作品を通して少しずつ引き込まれていく感覚がありました。
『私と福島』というテーマで皆さんが作られた作品は、今の時点での各自の答えのように感じます。この答えは変わっていってもいいし、変わらないままでもいいと思いますが、考え続けることが大事だと思います。私自身も「まだこれは未完成だ」と思いながら、できるところまでやっていこうという気持ちになりました。講師として来たつもりでしたが、むしろ多くのことを学ばせていただきました。

修了生

  • 自分の外側にあると感じていた福島が、自分のひとつのピースになったような気がする。
  • 表現活動を通じて自分自身の考え方の傾向、表現の傾向が分かるようになり、伝え方を吟味できるようになった。
  • 福島との関係性を捉え直したとき、私にとって福島は光だと気づいた。

といったお話を聞くことができました。

最後に開沼博が「私とは何か」を考える重要性を指摘し、表現を通して自分を再発見するプロセスを評価。今日の若者にとって自己表現が多様化する中で、より身近なものに目を向ける大切さを述べ、本プログラムが次年度以降も続いていくことへの期待で締めくくられました。

日時

2025年3月11日〜3月16日 10:00~17:00

主催

東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 開沼博研究室

参加費

無料

出展作家

「福島学カレッジ2024」表現コース修了生10名

トークセッション参加者

DJみそしるとMCごはん(ミュージシャン)/木下龍也(歌人)/佐藤実穗(福島学カレッジ2024表現コース修了生)/開沼博(社会学者、福島学カレッジ 統括プロデューサー)

トークセッション進行

菊地ゆき(福島学カレッジ表現コース プログラムディレクター)

関連URL

https://fukushimagaku-c-hyougen.org/

執筆者

菊地ゆき



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