東京大学 本郷キャンパス 情報学環本館地下1階
東京大学情報学環 オープンスタジオ
風と書の対話記2025・初沢亜利写真展「Fukushima 序章」
アーカイブ 2025年04月01日(火)
2025年3月21日から25日まで、東京大学情報学環オープンスタジオにて、「風と書の対話記2025・初沢亜利写真展『Fukushima 序章』」が開催されました。本展は、情報学環開沼博研究室が主催する福島県浜通り地域におけるアーティスト・イン・レジデンス(AIR)プログラムの一環として、写真家・初沢亜利氏が福島第一原発20km圏内に滞在し撮影した記録写真を展示するものです。
会期中は、平日にもかかわらず連日多くの来場者が訪れ、来場者はのべ200名を超えました。
展示された写真は、いわゆる「被災地」や「帰還困難区域」といった固定的なイメージにとらわれることなく、今そこに息づく人々の暮らしや土地の空気、時間の堆積といったものを繊細に写し取るものでした。来場者からは「報道では見えない福島の今があった」「どの一枚にも、静かに語りかけてくるものがある」といった感想が寄せられ、各々の写真の前で足を止め、長く見入る姿も多く見られました。会場では来場者全員にフォトブックが配布され、展示とともに記憶に残る記録として手に取っていただきました。
展示初日となる3月21日(金)18時からは、オープニングトークが行われ、50名以上が参加し、本展の写真家・初沢亜利氏、脳科学者・茂木健一郎氏、そして本企画を主催する東京大学准教授・開沼博が登壇。福島の地域性、表現を通して地域を見つめなおすことの意味や、「記憶の継承」において表現が果たしうる役割など、深くかつ多角的な議論へと展開しました。周囲に展示される写真を具体的に紹介しつつ、異なる背景をもつ登壇者それぞれの視点が交錯する時間に、来場者は耳を傾けていました。
観客席には福島県内外から、地域づくりや文化事業に携わる専門家、、アート関係者、研究者等の姿も多く、質疑応答の時間には多様な視点からの問いが寄せられ、活発な議論が生まれました。イベント終了後にも、来場者同士の交流が生まれるなど、「風と書の対話記」が目指す“対話の場”としての機能を確かに果たす時間となりました。
本プロジェクト「風と書の対話記」は、福島県浜通りを起点に、アートを通じて“対話”の回路を開き、人々の記憶や関心、経験を未来につないでいくことを目指しています。今回の写真展とオープニングトークは、その“序章”として位置づけられる試みでしたが、予想を超える多くの反響をいただき、今後の展開への確かな手応えを得ることができました。
今後は、福島県内での展示や地域との協働企画、他分野の表現者とのコラボレーションなども視野に入れながら、本プロジェクトをさらに発展させていく予定です。震災・原発事故から15年が経過する中で、単なる記録の保存にとどまらず、そこに生まれる新たな“記憶のかたち”を探るプロセスとして、「風と書の対話記」はこれからも歩みを続けてまいります。
2025年3月21日〜3月25日 12:00~19:00
東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 開沼博研究室
開沼博(情報学環准教授)
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