未来の運動会2050ワークショップ

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江渡浩一郎(理化学研究所未来戦略室)、犬飼博士によるコンセプト説明からワークショップはスタートした。このワークショップでは、2050年に運動会が行われ、その場で「大人VS子ども」という対立が起きているという場面設定に基づく演劇、映画を作るという前提で、その設定集を作成するという説明が成された。
ワークショップの要点としては、いかにリアルに2050年のシチュエーションを想定できるか?そのために参加者として様々な専門家が招聘された。

ワークショップ進行は以下の通り行われた。

    1. イントロダクション
    2. 自己紹介
    3. ワールドカフェ形式によるブレインストーミング
    4. グルーピング
    5. グループごとのディスカッションとプレゼンテーション準備
    6. 最終プレゼンテーション

話し合われた内容は、健康保険額の負担を減らすために健康税が導入され、運動量によって免税や保険料の減額等が受けられるようなシチュエーションを想定したアイデアや、地域開発のマフィアが運動会を通じて代理抗争を行うシナリオなど、奇異なアイデアも出たものの、その中で使われる技術や人々の価値観の想定は、各種専門家が取り組んでいる問題意識から導き出されたものであり、非常にリアリティのあるものであった。
最終的には4つのグループから5つのアイデアが提出された。

(発表1)

    1. スポーツの概念が変化し運動会が政治的な決定を行なう機関になっている
    2. 運動会への参加が義務となり、居住する行政区全体が運動会のフィールドになる
    3. 子どもはITや技術の知識によって運動会をハッキングしようとしている
    4. 運動において大人が弱者になっているため政治的にルールメイキングで強者になる
    5. 運動会を乗っ取ろうとする若者達の集団が登場しギャングとなる
    6. 運動会に参加することを拒否する反運動会活動が現われる
    7. 高度に発達したアンドロイドやサイボーグも運動会に参加する
    8. 多数のAIが世界に散在し、人間に対して不利益を発せさせる犯罪AIが登場する
    9. AIやロボットが高度に進化して、人間と見分けがつかない社会が来る
    10. 人間社会に溶け込んだAIを見分けるための場として運動会が使われる
    11. IoTやビッグデータによって、もっとも平等な運動会のルールがリアルタイムで作られる
    12. 技術による時間と場所に縛られず地域を越えた運動会が開催される

(発表2)

    1. センサと映像により再生された過去のデータと競う時空間を越えた競技が盛んになる
    2. 技術による時間と場所に縛られず地域を越えた運動会が開催される
    3. センサと映像により再生された過去のデータと競う時空間を越えた競技が盛んになる
    4. 国が全国民の生体データを収集する
    5. 少子高齢化に伴う医療費や孤独死がいっそう増大し危機的状況を迎える
    6. 運動税が課されており、納税のため一定の運動が義務化されている
    7. 運動をしないものは強制収容所に送られる
    8. 好きな自治体に、運動をふるさと納税できる
    9. 全区民対抗、または自治体対抗で運動会を行なわれ買った自治体が交付金を総取り
    10. 運動会で勝つために住民は毎週練習に参加する
    11. 他県や他国から助っ人をリクルートしてくる
    12. 運動税のために義務的に運動する子どもと無目的な子どもが対立する
    13. 高齢化した住民の健康維持と健康診断のために運動会が行なわれる

(発表3)

    1. 自治体対抗戦で子どもの数が少ない自治体が不満を持つ
    2. バイオテクノロジーによるアンチエイジングが広がる
    3. 外見による大人と子どもの区別が難しくなる
    4. 運動会では皆、何かのキャラクターを演じている
    5. 義務化された運動が社会のイニシエーション的存在になる
    6. ベーシックインカムの対価として運動を納める必要がある
    7. 健康ためだった運動会が過激化して危険で不健康な存在に変化する
    8. 子どもと大人の区別がつかなくなり、子どもと大人の定義が変化する
    9. ジムがIoTかされあらゆる運動からデータが取得され、コミュニティセンター機能を持つ
    10. 運動が過度の価値を付加されたことで、運動を是とする教義の宗教が生まれる
    11. スポーツ全般の価値が低下し、オリンピックがスポーツだけの祭典ではなくなる
    12. 大半の人が時間や場所に捕らわれず世界中の人とリモートワークで働いている
    13. 地方の人口減少地帯をカバーするために自動運転バスが普及する

(発表4)

    1. コミュニティ間の対立を解消するために運動会を行なう
    2. 特殊な経験や訓練をした人間のデータが高く売買される
    3. 人間がインプットする情報はすべてAIによってフィルタリングされる
    4. フィルタAIによってすぐ隣にいる人間同士でも違う現実が見えている
    5. 近い価値観に基づくフィルタAIを使うもの同士が集まりコミュニティを形成する
    6. コンテンツの制作支援技術が高度になり、年齢を問わずにクリエイターになれる
    7. 情報をフィルタするAIの使いこなせるか、または高価なAIを入手できるかで格差が生じている
    8. フィルタAIを自分のアウトプットにおいても使うと、自分の発言や見せ方をコントロールできる
    9. 世代を超えたコンテンツベースの共有体験が失われ世代間の対立が起きやすくなる
    10. 対立勢力を攻撃するためにフィルタAIをハッキングし自制力に都合の良いシナリオを送り込む
    11. ニッチな経験や訓練が運動会のルール変更によって有利な競技が生まれ突然価値を持つようになる
    12. 人口減少によって生鮮食品の流通網が衰退し加工食品中心の食生活になる

(発表5)

    1. 月面や海中などで国に属さない中立地帯としてエクストリームスタジアムが作られる
    2. エクストリームスタジアムでは人間の可能性を試すための極限環境競技が行なわれる
    3. 新しい競技を作ることに価値が生まれ、そのために極限環境への移住が促進される
    4. 移民増加や経済格差の拡大、ベーシックインカムの導入で江東区がスラム化する
    5. スラムの混沌とした秩序を守るための自警団としてのギャングが現われる
    6. 身体性の価値が低下し2028年のロサンゼルスオリンピックで近代五輪が終演する
    7. 2040年以降、AIがさらに高度化し身体性を獲得する
    8. 2048年にAIによる自治体行政の運営が開始される
    9. AIが地域住民の身体性の価値を高めるため運動会の開催を人間に提案する
    10. 人々はソーシャルレイティングによって序列を着けられている
    11. AIがレイティングの低い人々を活性化させるために運動会を開催する
日時

2018年2月12日 10:00 – 18:15

主催者

国立研究開発法人理化学研究所

参加者

一般参加 18名

執筆者:会田大也(東京大学GCL GDWS機構特任助教)



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