東京大学 本郷キャンパス 情報学環本館地下1階
東京大学情報学環 オープンスタジオ
被爆の実相とデジタルアーカイブ〜新たな継承の体験〜
アーカイブ 2018年09月18日(火)
戦後72年が過ぎ、被爆の実相を後世に伝えることが喫緊の課題です。被爆の実相を後世に伝えることを目的に記憶のコミュニティによるデジタル・アーカイブ制作のワークショップを開催しました。 まず、参加者によるイベント報告からその様子をご覧ください。
— デジタルの技術を駆使して、被爆者の記憶を後世に継承していく試みがある。 9月18日、東京大学(東京都文京区)で行われた「被爆の実相とデジタルアーカイブ 新たな継承の体験」に参加した。これまで集められてきた被爆者の体験談や写真をウェブの地図上に掲載することでその記憶を可視化し、蓄積していく取り組みを体験することができた。
体験会には約40人が参加。1グループ8人で、それぞれのグループが一人の被爆者を囲み体験談に耳を傾ける。そして、参加者が手持ちのスマートフォンを使い所定のウェブページに話の感想を書き込むと投稿が完了し、スクリーンに映し出された地図上にも反映された。私が参加したグループでは、その感想が次の会話の糸口となり、参加者と被爆者の交流がさらに弾んでいた。
体験会の進行をした渡邉英徳・東京大大学院教授は、「証言者と一緒にデジタルアーカイブを囲んで、肩を並べて双方的に談話できる場で記憶を受け継いでいくことができる」と説明する。地図上に被爆者の体験談が表示されるデジタルアーカイブによって、爆心地と被爆者の位置関係などが視覚化され、被爆者とイメージを共有しつつ、どこでどんな体験をしたのか、リアリティを持って話を聞くことができた。
交流に続いて、被爆者が持参した写真をカラー写真にする技術も体験した。渡邉研究室の研究員が、持ち寄られた写真をタブレットで撮影し専用ソフトで読み込むと、セピア色の写真はカラー写真となって表示された。持参された写真は被爆者の幼少期を写したものであるが、カラーにしてみると現代と変わらぬ趣だ。今を生きる私たちと何ら変わらぬ日常がそこにはあり、被爆者の存在を身近に感じられた。 今年で戦後73年を迎えた。戦後生まれは8割を越えるとされている一方で、戦争経験世代は年々減っていく。戦争経験者本人の口から語られる言葉に耳を傾けることは、もちろん重要だ。しかし、それだけでなく、彼らから語られた体験談を後世に継承していく具体的な方法を考え実行していく必要がある。 そのヒントを、デジタルアーカイブの体験で垣間見た。現代の技術は、戦争体験の継承にも生かすことができると、身をもって感じた。今回のような、戦争経験者が語る記憶の質感をも後世に受け継ぐ技術の体験を入り口に、記憶継承の輪が広がっていけばと思う。
田村 葉@埼玉(継承活動に取り組む人々をつなぐPJ) —
被爆体験、だけではなくその後の人生に触れる。 被爆者の言葉だけではなく、それに触れた聞き手の声も記録していく。 このワークショップは、そんな「継承」のアーカイブづくりです。
そういった場をこれからも設えていく予定です。
2018年9月18日(火)13:00-15:00
NPO法人 ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会
日本生活協同組合連合会 東京大学大学院情報学環 渡邉英徳研究室
被爆者、一般参加者、学生(東京大学、首都大学東京、国際基督大学、法政大学、早稲田大学、慶應義塾大学) 54名
成果物の反映サイト http://hiroshima.archiving.jp/index_jp.html http://n.mapping.jp/index_jp.html
執筆者: 田村賢哉(東京大学大学院学際情報学府文化・人間情報学コース博士後期課程)
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