まとまらない・まとめない話のワークショップ

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東京都コミュアシ講座×東大生の哲学対話

このワークショップでは、高校生と一緒に哲学対話(共に問い、考え、語り、聞くこと:梶谷真司『考えるとはどういうことかー0歳から100歳までの哲学入門』幻冬舎新書、2018)を体験します。ルールは下記の8つ。東京都教育委員会が主催する「コミュニケーション・アシスト講座(コミュアシ講座)」で学ぶ高校生とともに哲学対話を行うことで、今後のワークショップに活きる対話の方法を学びます。
① 何を言ってもいい。
② 人の言うことに対して否定的な態度をとらない。
③ 発言せず、ただ聞いているだけでもいい。
④ お互いに問いかけるようにする。
⑤ 知識ではなく、自分の経験にそくして話す。
⑥ 話がまとまらなくてもいい。
⑦ 意見が変わってもいい。
⑧ 分からなくなってもいい。

初日は、東京大学情報学環オープンスタジオに集合した大学院生の参加者と、哲学対話とは何か、コミュアシ講座の説明、このワークショップに参加した動機などを共有するイントロダクションを行いました。続けて、哲学対話で使用するコミュニティボール(話し手が持ち、次の話し手に渡していくボール)を制作しました。
11月2日にはTKP飯田橋ビジネスセンター(コミュアシ講座東部会場)、11月30日にはセミナーハウスクロス・ウェーブ府中(コミュアシ講座西部会場)で、午前と午後に90分ずつの哲学対話を行いました。大学院生から自身の進学経緯を含めた自己紹介があり、アイスブレイクを行った後、高校生とともに10名程度のグループで輪になって「将来の進路」をテーマに皆で問い出しと問い決めをし、対話を行いました。
期間中には、大学院生による数回のふりかえりや、新しい参加者のためのイントロダクション2を設け、高校生と対話した経験を反芻し、今後の展望を話し合いました。

アイスブレイクで緊張がほぐれ「問う」ことに少し慣れた参加者に、哲学対話の趣旨を伝え「将来の進路」をテーマに問い出しをしたところ、多様な問いが集まりました。
「将来やりたいことのために今準備できることは何か?」
「義務教育でない高校になぜいくのか?」
「ニートについてどう思うか?」
「幸福な人生とは何か?」
「人を信頼するためにはどうしたらいいか?」
「生きることと死ぬこととどちらを重視するか?」
「将来とはどこからどこまでを言うのか?」
「プロフェッショナルとは何か?」
「将来一番やりたくないことは何か?」などです。
ある問いから始まって、ほかの問いにつながることもありました。これらの問いの広がりやつながりが哲学対話の醍醐味といえるかもしれません。普段はなかなか人と話せないことをじっくり考え、語り、聞いてみる時間を過ごすことができました。

今回お邪魔したコミュアシ講座には、コミュニケーションに苦手をかかえた都立高校生が参加していました。また東京大学の大学院生は、看護、教育、まちづくりなどの現場で対話を行うことに関心を持った学生が集まってくれました。参加者それぞれが「否定的な態度をとらない」、「ただ聞いているだけでもいい」、「自分の経験にそくして話す」といった哲学対話のルールにすこし戸惑いながらも、それらを実践することで《安心して》問い、考え、語り、聞く場ができていったようです。対話をしている間は、高校生も大学院生もひとりの人として、多世代でフラットに話せる関係ができるという感想もありました。
今後の展望としては、患者さんを中心においたオープンダイアローグや、まちづくりの人間関係の土台づくり、教員と学生によるひらかれた学問探求の対話など、それぞれのフィールドで哲学対話を実践してみたいという声があがりました。哲学対話を経験した人から次の人、また次の人へ、コミュニティボールが多くの方の手に渡ることを願っています。

日時

10月24日(木)13:00〜15:00
11月2日(土)11:00~15:30
11月5日(火)13:00〜14:00
11月25日(月)11:00〜12:00
11月30日(土)11:00~15:30
12月13日(金)13:00〜14:00

主催者

東京大学GCL GDWS(10/24, 11/5, 25, 12/13)
東京都教育委員会(11/2, 30)

参加者

・東京大学 大学院生4名/医学系2名(内GCL生2名)、学際情報学府1名、工学系1名 計8名
・コミュアシ講座東部会場 高校生50名、大学生チューター6名 計56名
・コミュアシ講座西部会場 高校生30名、大学生チューター4名 計34名

関連URL

http://gcl-gdws.org
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/school/high_school/event_and_information/assist_seminor2017.html

執筆者:田口純子(東京大学大学院情報学環助教)



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