ゲームデザイン論 2022 (講師:安原広和 先生)

アーカイブ

中山未来ファクトリーでは、2022年度春学期の全学体験ゼミナール「ゲームデザイン論」という大学1・2年生向けの講義を2019年度から実施しています。これまでCOVID-19感染症対策からオンラインで実施してきましたが、今年度は対面で実施しています。

5月19日・26日は、ゲームデザイナーの安原広和さんをゲスト講師としてお招きし、講義を行っていただきました。

安原さんは、セガ・エンタープライゼス社のゲーム「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」の生みの親の1人であり、NaughtyDog社や北米バンダイナムコ社、北米任天堂を経て、現在Unity Technologies Japan 合同会社にて教育関連事業に携わりながら東京工科大学メディア学部の特任准教授をされています。

安原さんの2回の講義では、ゲームデザイナーの仕事内容に始まり、近年のスマートフォンを媒体とした「ハイパーカジュアル」ゲームがなぜ流行っているのか/楽しいのか?を検証するために、心理実験などを紹介しながら講義していただきました。

1回目の講義では、安原さんの実体験を元にしながらディズニーのアーケード機におけるVRを利用したエンターテイメントの体験拡張からはじまり、2000年以降に家庭用PCが安価に購入出来るようになってから開発が加速した家庭用ハードウェアにおけるゲーム体験の変化について講義いただきました。海外では社会的な嗜好として大人向けのリアリティを求めたゲームなどが開発されていることが日本のかわいいキャラクター戦略とは異なるベクトルであることが印象的でした。また、スマートフォンによる広告や課金などのマネタイズのシステムの傾向も日々変化・考察されていることを講義いただきました。

2回目の講義では、家庭用PCでも扱えてゲームの開発スピードを向上させることとなったUnityの紹介に始まり、開発は出来るもののどうしたらおもしろいゲームをデザインできるか?という観点から講義を行っていただきました。講義の中では、『双方の行動が常に相手に影響を与え続ける「あそび」』をゲームとなりえるものの定義として紹介され、他者によって変化し続けていくインタラクションがあることがゲームの必要要件であることが示されました。その上で、ゲームを成立させるための方法として、人のもつ2つのシステムを指標としながら事例を紹介いただき、人の心理や意思に関する手法の必要性と扱い方の注意について示唆されていたのが印象的でした。

日々、テクノロジーの進歩によって、リッチな映像体験やネットワークを介したあそびなどが提案されていく一方で、拡張されていく人の体験をデザインするためには、技術だけでなく遊ぶ対象であるプレイヤーである人そのものに着目していかなければいけないことが示された講義でした。

日時

2022年5月19日(木)、5月26日(木) 16:50-18:35

主催

東京大学情報学環 中山未来ファクトリー

関連URL

ゲームデザイン論2022 Webサイト:
https://sites.google.com/view/gamedesign2022/

執筆者:伊達亘(東京大学大学院情報学環・特任研究員)



アーカイブ一覧へ