福島芸術講報告会

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2024年3月22日、イベント「福島芸術講報告会」がオープンスタジオで行われました。

「福島芸術講」とは、社会学者であり現代社会のサウンドスケープを収集する活動を進めてきた東京大学情報学環の開沼博准教授が、作家の古川日出男さん、写真家の大森克己さんと共に立ち上げた芸術プロジェクトです。

このプロジェクトは、東日本大震災および原子力災害からの復興プロセスの記録と記憶を残すことを目的とした「講」であると、位置づけられています。

今回の報告会では、現メンバーである3名に加え、福島芸術講のプロデューサーである森彰一郎さんを迎え、編集者・プロデューサーの中島敏子さんの進行のもと、今年度の活動について44名の観客を前にトークショー形式で報告されました。

会の冒頭では、開沼先生から「福島芸術講」という名前の由来についての説明がありました。各地に伝統的に存在してきた、特定の縁と目的のもとに人々が定期的に集う「講」という受け皿が、改めて現代社会に必要なのはなぜか。その日常性と持続性を基盤にした革新や創造、相互扶助の機能が、五輪や万博、あるいはマスメディアのセンセーショナリズムやSNS上の炎上などに象徴される「祭」という非日常的・短期的な枠組みに対する、代替的社会システムになるのではないか。その中で、中長期的に記録・記憶を歴史につなげる手段・メディアとしてなぜ芸術が選ばれたのかといった解説がなされました。

その後、写真家の大森克己さんと作家の古川日出男さんと共に、音声、写真、文学を通じた芸術講の存在意義や役割についての討論が行われました。イベント後には懇親会も開催され、30名以上が参加し、来場者からの感想や意見が寄せられました。災害復興、メディア、芸術、コミュニティが交差する領域をどのように拡大していくか、情報学環の研究と社会との接点は今後も広がっていくことでしょう。

主催

東京大学大学院情報学環開沼博研究室
「福島芸術講」事務局

丁可(東京大学大学院学際情報学府社会情報学コース修士課程)

写真

間部百合



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