東京大学 本郷キャンパス 情報学環本館地下1階
東京大学情報学環 オープンスタジオ
ゲームデザイン論(講師:松田白朗 先生)
アーカイブ 2020年06月16日(火)
中山未来ファクトリーでは,2020年度春学期の全学体験ゼミナールとして,「ゲームデザイン論〜先端技術が生み出す新しいあそび〜」という,大学1・2年生向けの講義を実施しています.
6月9日と16日は,ゲームプラットフォームの開発者である松田白朗さんをゲスト講師としてお招きし,講義を行なっていただきました.
松田さんはGoogle社にてストリーミングゲーム・プラットフォーム「Stadia」のゲーム技術を担当されています.スマートフォンやゲームコンソールでのパフォーマンス最適化,ネットワーク,グラフィクス,サウンド等のゲーム技術を専門としながら,Apple社やMicrosoft社などで多くのプラットフォームやOS開発に関わられてきました.
1回目の講義では,主にゲームコンソール(ゲーム機)の技術についてのお話をしていただきました. 最近のゲームコンソールはPCとほぼ同じハードウェア構成になってきており,メジャーなゲーム機の一つである「Xbox One」を例に,CPUやGPU,RAM,各種チップがコンソールの内部にどのように構成されているのか解説していただきました.その他,一般的なゲームコントローラのボタン配置や,テレビ画面への映像出力,音の出力の仕組みについても触れられていました.
ゲームコンソールの歴史についても解説がありました.70年代に登場した第1世代のゲームコンソールから,現代の第8世代のゲームコンソールについて,各世代の代表的なゲーム機やゲームプレイ画面とともに,どのような技術的な進歩があったのかについて紹介されていました.また,2020年末に発売が予定されている「PlayStation 5」などの第9世代のゲームコンソール技術についても解説があり,消費者側ではなく開発者側からのゲーム機に対する見方を伺うことができました.
2回目の講義では,スマートフォンゲームやVR/AR,技術トレンドについてお話いただきました. スマートフォンの技術の発展は著しく,特に端末に搭載されているSoC(System on Chip)に関しては,半導体製造プロセスの線幅が年々細かくなっており,それに伴いチップの内部に含まれるトランジスタの数も増えていることから,性能向上してきていることが解説されていました.この他,スマートフォンにおけるバッテリ節約のための技術や,昨今話題となっている5Gなどのネットワーク技術の発展に伴う課題についても触れられおり,技術の向上がゲームコンテンツを制することの重大さを学びました.
ゲームエンジンの技術についても紹介されていました.様々な企業やプロジェクトで利用されている商用ゲームエンジンと,自社開発されたInHouseゲームエンジンがあり,それぞれの利点・欠点について述べられていました.また,商用ゲームエンジンについては,現在メジャーになっているUNREALやUnityの他にも2000年代頃から様々なものが開発されてきたことや,最新のゲームエンジンの中で話題となっている技術についても語られていました.
VRやARの技術については,レイテンシ(遅延)を抑えることが技術的チャレンジになっていることや,マシンラーニングの導入によって,より高度な映像表現が実現されてきていることが紹介されていました.
現在トレンドになっているストリーム・ゲーミングについてもお話いただきました.ゲームコンソールに相当する機能がサーバーに置かれるため,ユーザは専用のゲーム機ではなくスマートフォンやPCなどの汎用機を用意するだけでゲームをプレイできるという利点がある一方,通信が安定しなければレイテンシが発生してしまうことや,ユーザごとに異なる端末でも同程度のクオリティでゲームを提供できるようにする必要があることなど,技術的な課題があることが示されていました.
様々な新形態のゲームが登場していますが,それらが普及していくためには,コンテンツのみならずテクノロジーも重要であることを再確認させていただいた講義でした.
2020年6月9日(火),6月16日(火) 16:50-18:35
東京大学情報学環中山未来ファクトリー
大学生 53名
ゲームデザイン論Webサイト: https://sites.google.com/view/gamedesign2020/
松田白朗さん Twitterアカウント: https://twitter.com/hak
執筆者:阪口紗季(東京大学大学院情報学環・特任研究員)
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