東京大学 本郷キャンパス 情報学環本館地下1階
東京大学情報学環 オープンスタジオ
micro:bit LIVE 2026|Physical AIの時代に、私たちは何を学ぶのか
アーカイブ 2026年09月11日(金)
micro:bitが日本で広がり始めてから、10年。
人から人へと少しずつ広がったmicro:bitは、今ではコミュニティとなり、次の世代の子どもたちをインスパイアする活動へとつながっている。
2026年9月4日に、東京大学情報学環オープンスタジオでは、micro:bit LIVEと称してこれまでの10年を振り返ると同時に、「これからの10年」を考える機会を設け、40名ほどが集まった。
大きなテーマとなったのは、昨今注目を集めるPhysical AIである。AIが現実の世界で動く時代に、私たちは何を信じ、何を学ぶのか。そして、子どもたちにはどんな経験が必要なのか。さまざまな立場の登壇者と参加者が、ともに考えた。
10年間を振り返る――micro:bitから広がったコミュニティ
イベントの冒頭では、micro:bitが日本でどのように広がってきたのかを株式会社スイッチエデュケーションの小室真紀氏とともに振り返った。
プログラミング教育の始まり、コロナ禍、AI技術の台頭など、この10年にはさまざまな変化があった。その中で、micro:bit を使ったものづくりの輪は少しずつ広がり、全国の子どもたちへと届いていった。
Micro:bit Educational FoundationのCEOであるGareth Stockdale氏は、社会やテクノロジーが変化しても、コミュニティが大切にする価値は変わらないと述べた。テクノロジーの仕組みを理解することに加え、コミュニケーション、コラボレーション、批判的思考、創造性。そして、楽しみながら学ぶこと。これらは、どんな時代にも必要なものである。
AIの時代に、私たちは何を信じ、どう学ぶのか
Physical AIの現在地を考えるパネルディスカッションでは、異なる立場からAIやテクノロジーに関わる3人を迎えた。
野田 景子さん(日本マイクロソフト株式会社 チーフラーニングオフィサー)、伊澤 諒太さん(株式会社ハタプロ 代表取締役/Proof of Japan株式会社 代表取締役)、齋藤 尚史さん(経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 次世代半導体戦略室長)。
学び、人材育成、テクノロジーの社会実装、そして産業政策。それぞれ異なる場所からAIの変化を見ている3人に、「Physical AIは私たちの世界をどう変えるのか」「AIが現実世界で動くとき、私たちは何を信頼するのか」「その力をどう育てるのか」といった問いを投げかけた。
「当たり前」を疑い、経験から学ぶ
伊澤氏が挙げたのは、「常識を疑い続ける」こと。齋藤氏も、インターネットの登場時と同様、AIが生み出す情報を鵜呑みにせず、批判的に見ることの重要性を指摘した。
一方で、考える力は頭の中だけで育つものではない。伊澤氏は、「リアルな経験をもとに考えたアイデアのほうがおもしろい」と語り、実際にやってみることの価値に触れた。AIと生きる時代だからこそ、「楽しく失敗する」経験をどれだけ担保できるかも重要になる。
野田氏からは、失敗や壁を乗り越える中でのメタ認知や内省の大切さについても語られた。
一人でできることが増えるからこそ、誰かとつくる
AIによって一人でできることが増える一方で、齋藤氏は、自分自身をアップデートし、イノベーションを生み出すためにも、多くの人が協働することの重要性を語った。野田氏からは、そこにダイバーシティの視点も加わった。異なる経験や価値観を持つ人と考えることで、新たな視点が生まれる。そして、壁を乗り越えるときにもチームが必要になる。
議論を通して浮かび上がったのは、Creative Thinking、Critical Thinking、Collaboration、Communicationという、これまでも大切にされてきた力の価値である。
AIができることが増えるほど、「何を信じるのか」「何をつくりたいのか」「誰とやるのか」を自分で考えることが、より重要になるのかもしれない。
「あそび」を考える
パネルディスカッションを受け、東京大学情報学環特任研究員の倉本大資氏からは、「手を使って考えること」と「頭を使って考えること」の違いなどを切り口に、「あそび」について考える話があった。
頭の中で考えることも創造的である。しかし、現実の物理世界では、実際に手を動かしてみなければ分からないことがある。「手を使って考える」ことは、人間が世界を理解していくための根源的な営みなのかもしれない。
子どもたちは、あそびの中で自発的に世界と関わりながら学んでいる。AIが多くのことを考え、答えを出してくれる時代だからこそ、こうした経験の価値は、むしろ大きくなっていくのではないだろうか。
これからの10年も、問いを重ねていく
この先の10年も、技術は変わり、予想もできなかったことがきっとたくさん起こっていく。だからこそ、大人も最初から「正しい未来」を決めてしまうのではなく、その時々で問いを持ち寄り、考え、試してみることが大切なのだろう。
一人ひとりが世界を見て、触れて、考え、つくり、そしてその経験を誰かと分かち合う。そうした一つひとつの活動が、今日の日本のmicro:bitコミュニティを形づくってきた。
技術が変わっても、問いを持ち、試し、誰かと学び合う。その営みを重ねながら、次の10年もまた一緒に、世界を見て、触れて、考えて、つくっていきたい。
Micro:bit Educational Foundation
情報学環オープンスタジオ/中山未来ファクトリー
2026年9月4日 18:00-20:00
畑 紗羅(Micro:bit Educational Foundation)
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