東京大学 本郷キャンパス 情報学環本館地下1階
東京大学情報学環 オープンスタジオ
ダイバーシティワークショップ:当事者との「書い話」
アーカイブ 2026年09月21日(月)
2026年8月から9月にかけて、東京大学情報学環オープンスタジオにて、入澤充(山内研究室所属博士課程2年)による「ダイバーシティワークショップ:当事者との『書い話』」を実施した。今回は、春休みに実施したワークショップに引き続き、東京大学の学生22名を対象として実施した。
「書い話」とは、「当事者からのメッセージに対して、推敲を重ねた手紙で応えること」を意味する企画・運営者による造語である。このワークショップでは、障害者もしくは性的マイノリティの当事者が自身の経験について語る動画を視聴し、その語りに対して参加者が手紙を書く。しかし、最初に書いた手紙をそのまま完成稿とはせず、他の参加者と対話を重ね学びを深めながら何度も読み返し、書き直していくことを活動の中心に据えている。
参加者はまず、当事者の語りを聞いて感じたことや考えたことを手紙として記した。その後、他の参加者との対話を通して、当事者が動画の中で語った経験だけでなく、その背景にどのような社会的な環境や経験が存在しているのかについて考えた。また、当事者について理解しようとするだけではなく、自分自身がどのような立場から当事者の語りを聞いているのか、自分にとって「当たり前」になっている環境や経験は何かについても話し合った。
こうした活動の間に、参加者は最初に書いた手紙を繰り返し推敲した。新しく知ったことや他の参加者との対話を踏まえ、「最初に書いた言葉をそのまま当事者に届けてよいのだろうか」「自分はなぜこのような言葉を選んだのだろうか」と自らの文章を読み返しながら、表現を加えたり、削ったり、書き換えたりしていった。
このワークショップで重視しているのは、当事者についての「正しい知識」を一方向的に学ぶことだけではない。当事者の経験について考えることと同時に、その経験を理解しようとしている自分自身の立場についても考え、それまで自明に感じていた自分の見方を捉え直すことを目指している。そのため、一度書いたものを完成とせず、他者の語りや資料との出会いを経て自分の言葉を何度も見直す「推敲」という活動を取り入れている。
実際のワークショップでは、同じ動画を視聴していても、参加者によって注目する箇所やそこから考えることが異なっていた。対話では、自分一人では気づかなかった見方に触れる一方、「当事者ではない自分に、どこまで相手の経験を想像することができるのか」「自分とは異なる立場にいる相手に、どのような言葉で応答すればよいのか」といった問いについても話し合われた。
手紙を書くこと、他者と対話すること、そして再び自分の手紙に戻って書き直すこと。この往還を通して、自分とは異なる立場にある人について考えると同時に、自分自身の立場やものの見方についても捉え直していく時間となった。
2026年8月10日、13日、27日、9月7日、14日
東京大学情報学環オープンスタジオ
情報学環山内研究室 入澤充
東京大学の学生
入澤充
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